6月7日の時点で菅直人氏はまだ首相ではない。
もちろん去る4日の国会で菅氏が次の首相に指名されたことは周知の通り。
でも彼はまだ首相に正式に任命されていない。
だから当然、首相ではないわけだ。
その点、マスコミは心得たもので、鳩山氏を首相とする一方、菅氏は次期首相とか新首相として区別している。
首相はあくまでまだ鳩山氏ということ。
しかし、前首相と表現している例がある。
これは不正確。
今の時点で前首相は麻生太郎氏で、鳩山氏は現首相だ。
だから菅新首相というのも厳密には正確ではない。
正しくは鳩山首相と菅次期首相。
何故こんなことに拘るのか。
別に短命に終わった鳩山首相の在任期間を少しでも延ばしてやろうという意図があるわけではない。
そうではなくて我が国の首相就任には天皇陛下による任命が不可欠であることを、この機会に改めて確認しておきたいだけだ。
菅氏は明日、皇居で親任式を行ってはじめて正式な首相になる。
宮殿松の間で陛下の御前に進み「任命します」とお声をかけて頂き、傍らに立つ前任の鳩山首相から任命書を受け取る。
これで彼は晴れて首相になれるのだ。
閣僚は言うまでもなく、首相が任命する。
だが、首相の任命だけではダメ。
やはり陛下の認証が欠かせない。
だから閣僚についても、官邸でなく皇居で任命式が執り行われる。
場所は同じ宮殿松の間。
陛下の御前で傍らの首相(今回は菅氏)から任命書を受け取ると、陛下から「重任、ご苦労に思います」とお声をかけて頂く。
かくて閣僚への就任がここで果たされたことになる。
内閣それ自体の評価に関わりなく、どんな内閣でも陛下の任命、認証なくして発足することはない。
ありふれた事実であるが、意外と見逃されているので、我が国における天皇の存在意義を振り返る一助として、敢えて取り上げてみた。